はじめに
発達性読み書き障害の子を持つ漫画家、千葉リョウコさんが描いた本『うちの子は字が書けない』をご紹介します。
この本は、千葉さんが母親の立場から描いたマンガのパートと、発達性読み書き障害の研究をしている専門家の宇野彰先生との対談のパートで構成されています。どちらのパートも難しい文はなく、読みやすいです。
主人公フユくんとうちの一人目は重なるところが多かった
「字が書けない」と聞くと、「本の読み聞かせが足りない」と思われる向きがあるようですが、そんなことはないと思います。
フユくんは図鑑好きだったそうですが、ティーミンは物語が好きです。1歳頃から、寝る前に絵本の読み聞かせをしていました。
母親である私の子供の頃の方が、よほど読み聞かせしてもらっていなかったです(が、幼児の頃から読み書きできました)。
フユくんは、母親の千葉さんと教頭先生に理解があり、学校の特別な授業を受けられることになりました。でも、千葉さんが発達性読み書き障害の講演会に行き、専門機関を受診するまで、フユくんはひらがなが身につきませんでした。
専門家の宇野先生によると、読み書きができない原因は人それぞれで、その原因を探るのはとても難しいそうです。そして、その原因に対応したオーダーメイドの解決策でなければ、読み書きができるようにならないようです。
だから専門家に見てもらうべきなのでしょうが、この【専門家】って具体的にどんな人のことでしょうか。
※以下の「私が考える専門家はこんな人」は本の内容とは関係ありません。
興味のない方は飛ばしてください。
私が考える【専門家】はこんな人
学校の先生は【教育のプロ】ですが、うちの子にひらがなを習得させることはできませんでした。
ちなみに、夏休み後に発達支援センターで相談する機会がありました。ひらがなの清音はなんとか習得できたものの、特殊な音節(促音や拗音など)に課題があり、専門家のアドバイスが欲しいと思っていたためです。
でも、そこでの発達支援教育の専門家のアドバイスは、「きつねの【き】」の方式でひらがなを覚えさせましょう(お母さんの手書きのドリルはいいですね、この調子で頑張るといいですよ)とのことでした。
あまりの衝撃に、散々やってダメだった方法であるとはついに言い出せませんでした。
つまり、【教育のプロ】でも【特別支援教育のプロ】でも、読み書きの苦手に対応するには物足りない気がします。その専門家が、さらに【うちの子のプロ】になってくれてはじめて、きちんとした支援が受けられるのではないでしょうか。
横道にそれて長くなり、すみません。本の内容に戻ります。
発達性読み書き障害を持つ子の将来を悲観することはない
作中でフユくんは高校生になり、続編では専門学校生として再登場します。うちの一人目ティーミンはまだ小学生ですが、将来的にどんなことが起こりうるかを知ることができて、とても良かったです。
また、読み書きが苦手な子が【しんどくならない人生を選ぶのに大事なことは何か】を考えることができました。私も水着審査のある職業は選ばなかったし、私が貢がないと生活できないイケメンを結婚相手には選びませんでした。だから、ティーミンだって彼なりに楽に生きられる道を選ぶのがよいのだと改めて思えました。
そして、千葉さんのマンガの締めくくりがとても愛情にあふれていて、感動しました。ティーミンが読み書きが苦手であることがわかって、動揺した時期もありました。でも、その苦手も含めて可愛い我が子なのだ、と本を読みながら頷いていました。
たくさんの人に読んでほしい
ちなみに、私は70代の実母にこの本を読んでもらいました。ティーミンの読み書きの苦手を説明したところ、「でも、算数は天才的にできたりするんでしょ?」みたいな意味不明な返答をされて、納得してもらうのに疲れたからです。
本を読んでティーミンが置かれた状況を理解し、でも悲観はせず前向きに捉えてもらえました。
それは、この本で描かれる千葉さんを始めとする周囲の人たちのフユくんに対する愛情や、フユくんが自分以外の読み書きで苦労している子供達を思う気持ちに、心を打たれるからだと思います。
たくさんの人がこの本を読み、発達性読み書き障害について理解が深まればいいなと思います。