うちの一人目、つまり我が息子ティーミンが、小学1年の7月初めの時点で確実に書けるひらがなは、両手にちょっと余るくらいでした。
別に遊んでいたわけではありません。入学後の4〜5月の休校中に出された宿題の中にひらがなを2回ずつくらい書く練習があったことと、時間がたくさんあったので家でひらがなを書く練習をしていました。ひらがな46文字を30回以上は書かせたと思います。
でも、全然覚えられませんでした。文を読むのもしんどそうで、とても短い詩を読むのも嫌がりました。
学校からは「授業でひらがなを書けるようにしていくので、家では覚えさせなくて良い」との通達がありましたから、不安に思いつつも入学式直後の頃は楽観していました。
正直なところ、私にはわかりませんでした。私は、小学校に上がると日記を書いて、引っ越した友達に手紙を書いていました。親に読み聞かせしてもらった記憶がなく、幼児の頃から本は自分で黙読するのが当たり前でした。運動と計算は苦手でしたが、ひらがなの読み書きに苦労した覚えがありません。
だいたい日本語を毎日使って、それも不自由なく話しているのに(私を上手に罵ることさえ出来るのに!)、『ひらがなにたくさん触れても覚えられない』というのが、さっぱりわからなかったのです。
通常通りに授業が始まり、ティーミンが学校でひらがなを習う日々が続きました。でも、ティーミンにその知識が蓄積されていく様子は見受けられませんでした。
毎日、自宅学習用のノートに私が問題を作り、ティーミンに解かせました。
例えば、狐のイラストを欄外に描いて「つ、ね」と書き、空欄に「き」を書かせる方式です。市販のドリルなどでお馴染みの方法ですよね。
ティーミンは、書くべき字がわかっても覚えていないから書けず、また前日に自宅や学校で練習したのに見事なほど頭から抜け落ちていることも多かったです。
「なんで出来へんの、本気でやってへんからちゃうの」
と、私はティーミンをしょっちゅう責めていました。
そんな中、ティーミンが学校で作った七夕の短冊を持って帰ってきました。
「ほら見て、先生に手伝ってもらってぼくが書いたんだよ」と、とても嬉しそうに見せてくれたそれには、こう書かれていました。
「じがおぼえられますように てぃーみん」
その時、私はハッとしました。七夕に願ってしまうほど、字を覚えたいとこの子が思っていること。そして、私がこの子の心を追いつめていたこと。
「ごめんね、お母さん言いすぎた。」
ティーミンはキョトンとして、それからうなずきました。私が変わったのは、この時からだった気がします。
ティーミンを絶対責めない。ティーミンがひらがなを覚えられないなら、それは教え方が悪いんだ。ティーミンに合う方法を、私が考えなくては。